2020 アメリカ ドラマ
1970年代、アメリカ。チェスの天才少女の半生の物語。
題材はチェスですが、いわゆるスポ根的な。
親を亡くして孤児院で育った子供が
逆境の中でも才能を開花させ、
州で、アメリカで、そして世界で勝ち上がる姿を描いています。
チェスと出会って、でも最初は全く才能を発揮できず、
自力で少しずつ扉を開いていく。
様々な出会い、別れ、そしてある程度の高みにのぼると壁にぶちあたる。
その壁は自分自身。
自分自身の壁を破れず、薬や酒に頼り、
友を遠ざけ、
あぁ、これで終わりか……と暗雲が立ち込めますが、
不遇な時代を乗り越えた友の助けを得て飛躍。
そこからは涙なくして見られませんでした。
こうしてあらすじを追うと、なんてことのない平凡なサクセスストーリーのようですが、
まずは俳優陣の演技、ストーリー展開、
映像、音楽、衣装や建物、風景、
全てが完璧でした。
ここ1年で最高のドラマかも。
余韻も最高です。
アメリカ人のベスは、
ソ連の世界チャンピオンとの対戦にあたり、
様々な組織から政治的に利用されそうになります。
冷戦時代だけに、アメリカではチェスの内容ではなくただソ連に勝つ、ということしか注目されない。
それはもうあらゆる局面で。
金銭支援と引き換えだったり、
功績を褒め称えながら、プロパガンダに利用されそうになりますが、
ベスがかっこいいのはそれを毅然と拒否する姿勢。
ソ連の遠征費がふいになっても、
教会に小切手を突き返す姿には惚れ惚れ。
その後早速後悔するところも可愛げがあって最高です。
外野は本当に煩わしいけれど、
ソ連でチェス大会に挑んだベスと、迎えたソ連チーム。
彼らは純粋にチェスに命をかけて向き合い、楽しみ、苦しんでいることでは同じ立場で、
お互い心から尊敬しあっていて。
それはアメリカからベスを応援する戦友達も同じく。
そしてチェスを愛するソ連の人々は、アメリカから来たスターをまた純粋に応援し声援を拍手を送る。そのあたたかい情景で、彼女を政治利用しようとする者の声はかき消されます。
国際電話がかかってきた時は泣きました…。
孤児院で一緒に育ったジョリーンの台詞にも、2人の関係にも、
シャイベルさんがためていたベスの記事、写真、手紙にも、涙涙です…
ベスが車内でそれまで抑えていた感情を爆発させた時、彼女の中で確実に何かが変わった気がしました。
きっと自分は一人だと感じ言い聞かせながら生きてきたけど、そんな自分を遠くから見守ってくれる人達がいた…
それを知った時、彼女の心の空洞が満たされたのではないかと。
一番のクライマックスはそれまで薬や酒に頼ることでしか得られなかったチェス盤のシュミレーションがボルコフとの最大局面で描けたこと。
ベスのあらゆる苦悩がそこで一気に消化されたようで、とても美しく感動的なシーンでした。
あとはラストシーン。
ソ連の公園でチェスをする老人達に近寄るベス。
歓喜でもてなす老人達。
政治対立や思想の違いなんてそこには無い。
勉強したロシア語でおじいさんとの対局を受けるエンディング。
嬉しそうで楽しそうで、心底ワクワクしているのが伝わる良いシーンでした。
白い帽子に白いコートが、彼女の軽やかな心の内側を表しているようでした。
とても似合っていて、輝いて素敵でした。
ベスはシャイベルさんと彼らを重ねたのかも。
とにかくベスの可愛さがどんどん増して、
物語は終わりましたが、
その後のベスはきっと描かれた物語以上にドラマチックな活躍をするに違いない、
と清々しい気持ちになるエンディングでした。
主演の彼女、初めてみた女優さんでしたが素晴らしかったです。
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