2017 アメリカ 映画
!ネタバレしています!ご注意下さい!
言語学者のルイーズと亡くなった娘ハンナ、
数学者のイアン。
この3人が物語の主軸でしょうか。
あとは中国人民軍のシャン上将、米軍のウェバー大佐。
主要な人物は5人くらい。
物語はまずハンナの誕生から病気で亡くなるまでで始まり、
宇宙から謎の飛行物体が地球に飛来することで動き出します。
様々な時系列で断片的に描かれていて、
なかなか理解できずに物語がすすみます。
地球にやってきた12隻の宇宙船。
巨大で真っ黒なばかうけ(お菓子の)みたいな形です。
宇宙人は人間よりかなり大きいけどタコみたいな感じの生物です。
アメリカのモンタナにきた船には2体のヘプタポッド(ルイーズとイアンの命名)。
ルイーズは言語学者として彼らとコンタクトをとるべく、
地道にコミュニケーションをはかります。
徐々にコミュニケーションがとれるようになるものの、
世界的には軍事力を行使して先手をうって攻撃すべきとの声が高まり、
ルイーズや各国の研究者達の声はかき消されます。
回想・宇宙人との対話の解析・各国や軍部の動きなど、
何がどう関連するのか分からないまま、どういう結末を辿るのか、
それだけが気になって見進めます。
回想も解析も静かにすすむので、ともすれば退屈になりそうですが、
絶妙なバランスで結末への興味がわく物語でした。
途中で娘のハンナがヘプタポッドと対話するルイーズの絵を描いたり、
粘土でヘプタポッドみたいなものを作っていたり、まさか娘が予言していた?とか、
ヘプタポッドの発する音が石を打ちつける音だったり
紙をめくる音に聞こえるところにヒントがある?とか、
視聴しながらも難解なメッセージをなんとか読み解こうとする作業は
宇宙人とルイーズの作業の擬似体験のような感覚でした。
終盤、謎が解き明かされるにつれ、ハンナのことを誰かと聞いたり、
夫との別れの原因が分かったと言ったり、
ルイーズが視聴者の時間軸を裏切る発言をし始めて、
え?何言ってんの?記憶喪失なの?とか、その時点でまだ気付かずにいた私ですが、
察しの良い方は早々に気付くんでしょうか。
「ルイーズは未来を見る」
「武器は時を開く」
ヘプタポッドからのメッセージ。
そして回想は騒動から1年半後のとあるパーティー、
シャン上将がルイーズに話かけてきます。
そこで全てが繋がります。
ハンナの回想は過去ではなく未来だった…
イアンが他言語での夢を見る話をしていた時、
視聴者が過去の夢と解釈していたルイーズの夢は実際は未来で、
それはつまりヘプタポッドの言語を理解し始めていることのサインで。
ルイーズが夫に間違った判断と言われたのは、
病気で亡くなることが見えているハンナを産んだことだった。
冒頭のメッセージも繋がってきます。
ルイーズがヘプタポッドからのメッセージを急速に理解したのと同じように、
視聴者もバラバラのパズルのピースが揃う感覚になります。
すごくすっきりするけれど、同時に感情が溢れて私は何故か涙が止まりませんでした。
これはルイーズとイアンが出会った物語で、
それから2人はハンナを授かって。
ハンナの名前はHannah。
前から読んでも後ろから読んでも同じ。
まるでヘプタポッドの時間の捉え方のような。
時間は過去から未来へ流れるものではなくて。
ルイーズとイアンの関係性から想像するに、
ルイーズはヘプタポッドの言語を完全に理解するけど
イアンはそうではないということでしょうか。
共に生きていても時間の概念が違うとは、
なんとも生き辛そう…だから別れがきてしまうと。
ただ、イアンの最後の言葉。
自分の思いをより相手に伝えようとする、と。
2人がそうすることで、ルイーズ、イアン、ハンナにとって幸せな時間が
少しでも長く続いてほいしと願います。
結局失って辛い思いをすると分かっていても、
愛する我が子に会いたいルイーズのこれからの人生を思うとすごく悲しいけど、
時間軸にとらわれなければハンナと過ごす時間はなくならない、ということでしょうか。
Hannahの名前のように、終わってもう一度冒頭を見返しました。
難解だけど、なぜか心に沁み入る物語でした。
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